ＤＭＣＣＳ
日米欧総合安全保障議員協議会 NATO Parliamentary Assembly
05-12号
会報 |
「ウクライナ関連ニュース（中東情勢も含む）（2023.10）」
ロシアに占領された領土の奪還を目指すウクライナ軍（ウ軍）の必死の反転攻勢は、クリミア半島への特殊部隊の上陸、ヘルソン州のロシア占領地への渡河作戦開始、クリミアのロシア軍（ロ軍）防空システムへの攻撃、ドニプロ川対岸に「橋頭堡」設置等、大きな戦果を挙げているようです。一方、ロ軍はウクライナが奪還したドネツク州のアウディ―イウカに対し、5,000人の損害（ウクライナ情報）を出しつつ人海戦術により攻勢に出ています。ウ軍はザポリージャ州メリトポリ方面への攻撃を開始しロボティネに到着したのは8月でしたがそれ以降ほとんど前進していません。また、露軍のウクライナ領の17％の占領は5月以来変化がないようです。ウ軍ザルジニー総司令官は英紙エコノミストとのインタビューで、戦況が「膠着状態にある」と述べています。
本会報でも一部掲載しておりますが、ウクライナ産の穀物禁輸措置に悩むポーランド首相のウクライナへの新たな武器供与停止への言及、スロバキア首相のEU欧州委員会委員長への「新政府はウクライナへの軍事支援を行わず、人道支援に絞る」との宣言、ハンガリー首相のEUに対する、「ウクライナは前線で勝利しない」、「EUの戦略は失敗」との発言、更に、ドイツでは親露的な右派ポピュリズム野党「ドイツのための選択肢（AfD）」への支持拡大などがありました。また、戦闘長期化だけではなく、イスラエルがハマスの攻撃を受け、ウクライナへの関心が薄れたこともあると思われます。ジョンソン米国下院議長は、「悲惨なイスラエルの状況の方がより緊急的」とイスラエルへの軍事支援への優先順位が高いとの指摘もありました。武器支援等によりウクライナを支えてきた米欧では、一部の国々でウクライナ支援の熱気が冷め始めているように見えます。
これから冬を迎え戦場は泥濘化し、機甲・機械化部隊や戦闘車両等の行動が制限されます。引き続き、ウクライナは領土を回復するまでは決して停戦せず、果敢な反抗攻勢を続行するものと思われます。一方で、プーチン大統領は来年の大当選における自らの再選のためにも大規模な兵力損耗を無視してでも東部戦線における戦略的な戦果を得るまで決して引き下がらないものと思われます。長期戦は避けられないものと予測されます。
ご参考のため配布します。
令和5年11月
日米欧総合安全保障議員協議会
幹事長兼事務局長 長島 昭久 衆議院議員の命により、同事務局
以下、会報『05-12号』（会員等に限定配布）のとおり。