ＤＭＣＣＳ
日米欧総合安全保障議員協議会 NATO Parliamentary Assembly
04-12号
会報 |
「NATO 2022戦略概念」
令和4年6月29日（水）、スペイン王国マドリード市において開催されたマドリード首脳会議において、NATO 2022戦略概念が承認された。本首脳会議には、NATO加盟を申請したフィンランド、スウェーデン、ジョージア、そしてNATO非加盟国からは、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国も初めて参加した。
旧戦略概念は、2010年のNATOリスボン首脳会議で採択された。新戦略概念は、同盟国が直面する新たな安全保障の現実を説明し、NATOの価値を再確認し、同盟国の集団防衛を確保するというNATOの主要な目的を明示しており、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、「NATOの新戦略概念は、より危険で競争的な世界における同盟の青写真である」と、述べている。
新戦略概念の要旨は、次のとおりである。
序文において、戦略概念についてその骨子を述べている。NATOは70年以上にわたって、同盟国の自由と安全を確保してきた。北大西洋条約に対する我々の確固たるコミットメントを再確認し、あらゆる脅威から、それがどこからのものであれ、互いを防衛することを再確認している。公正で包括的かつ永続的な平和を目指して引き続き努力し、ルールに基づく国際秩序の防波堤であり続ける。また、NATOの主要な目的は、360度のアプローチに基づく集団防衛の確保であるとし、この戦略概念は、「抑止と防衛」、「危機の予防と管理」、「協調的安全保障」という、同盟の3つの中核的任務を定義するものである、としている。
目的と原則では、あらゆる方向からのあらゆる脅威に対して、我々の集団的防衛を確保することを目的とし、個人の自由、人権、民主主義、および法の支配という共通の価値観によって結ばれていることを強調している。また、国際連合憲章および北大西洋条約の目的と原則に固くコミット
し続けるものであり、抑止及び防衛の能力が、そのコミットメントの背景をなすものとしている。
戦略環境では、ロシアが、NATO加盟国の利益、価値観、民主的な生活様式に挑戦し、加盟国の主権と領土の一体性を脅かしており、安定的で予測可能な欧州の安全保障秩序に貢献した規範と原則を破っていると非難し、ロシアを「最も重大かつ直接的な脅威」としている。また、中国に初めて言及し、「中国が表明している野心と強圧的な政策は、NATOの利益、安全保障、価値観に挑戦している」と非難している。テロリズムの脅威、サイバー攻撃、宇宙空間の安全保障、侵攻テクノロジーによる新たな脅威、大量破壊兵器のリスクの増大についても述べ、また、気候変動に関する安全保障上の記述も盛り込んでいる。
NATOの主要任務では、
「抑止と防衛」に関しては、大幅な強化を掲げた。サイバー攻撃では、ハッキング等だけでなく、民主的価値と人権を反映した責任あるデジタル技術の使用を盛り込んでいる。
「危機の予防と管理」では、新たな専門知識の上に戦略を構築すると表明。気候変動、食糧不安、保健衛生の緊急事態が同盟国の安全保障に及ぼす影響に備え、軍事だけでなく、文民の領域まで含めた計画や対応能力が必要とした。
「協調的安全保障」では、北大西洋地域の国家の独立、主権、および領土の一体性を守る目的を共有する民主主義国家にNATO加盟の門戸を開くことを掲げた。今回のフィンランドとスウェーデンのNATO加盟手続きもその一環とみられる。
同盟の継続的な成功の確保において、政治的な結束と連帯を引き続き強化、協議を拡大すること、防衛及び安全保障に関する責任とリスクを公平に分担すること、そして、NATOはヨーロッパ大西洋の安全保障に不可欠であり、我々の平和、自由、繁栄を保証するものであるとし、同盟国として、引き続き共に立ち向かおうと結言している。
以上の要旨を、次の項目立て（目次）に従って詳述している。
目 次
Preface 序文
Purpose and Principles 1-5 目的と原則 1〜5
Strategic Environment 6-19 戦略環境 6〜19
NATO's Core Tasks 20-46 NATOの主要任務 20〜46
Deterrence and Defence 20-34 抑止と防衛 20〜34
Crisis Prevention and Management 35-39 危機の予防と管理 35〜39
Cooperative Security 40-46 協調的安全保障40〜46
Ensuring the Alliance's Continued Success 同盟の継続的な成功の確保
47-49 47〜49
会員の皆様方のご参考に供したく会報として配布致します。
令和5年1月
日米欧総合安全保障議員協議会事務局
以下、会報『04-12号』（会員等に限定配布）のとおり。